株式会社マインドシーズ代表取締役
1985年、三重県鈴鹿市生まれ。
東京大学法学部卒業、同公共政策大学院修了。
三菱UFJ銀行にて法人営業、組織再編プロジェクト、管理会計などに携わったのち、2014年に独立。経営人材育成を行なう株式会社マインドシーズを設立、上場企業の役員層・部長層を中心に1000名以上の育成、評価を行なう。
2021年にシンガポールに進出、MINDSEEDS SG PTE. LTD.のDirector就任。
オンライン教育プラットフォームであるUdemyにて経営戦略を中心とした動画セミナーを多数配信、受講生の総数は13万8000人を超える(2025年6月現在)。個人向けの学びの場である「寺子屋」も開催。
著書に『マーケティングの大事なところを3時間で学ぶ』(小社)。
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1-
今、ビジネス雑誌・書籍、Web記事を読むと、しょっちゅう「戦略が必要だ」といった内容の記述を目にします。
ところが、「ビジネスにおける戦略(経営戦略、マーケティング戦略、営業戦略など)とはいったい何なのか?」をしっかり把握した上で、書かれているものは少ない気がします。
もしかしたら、皆さん自身も戦略という言葉はよく見聞きするし、場合によっては口にすることがあるかもしれませんが、戦略について原理的かつ体系的に説明できる人は少ないのではないでしょうか。
つまり、多くの人が日々当たり前のように使いつつも、実際にはどういうものかよくわかっていない、そんな不思議な言葉の1つが「戦略」といえるでしょう。
本書は、「なぜビジネスにおいて戦略が必要なのか?」「具体的にはどのような戦略理論があるのか」「実際のビジネスにおいて戦略理論はどのように使われているのか」を、有名企業の成功・失敗の事例84ケースを紹介しながら、わかりやすく解説しています。
本書をお読みいただくことで、皆さんのビジネスを見るときの解像度は一段も二段も上がります。「ビジネス戦闘力を上げたい」――そんな方にはぜひご一読いただきたい1冊です。POSTED BY貝瀬
View More「なぜ、あの会社は成功し、この会社は失敗するのか?」
ビジネスパーソンなら誰しもが抱く、この疑問。実際、成功している会社には思いもかけないようなさまざまな勝ちパターンがある一方で、うまくいっていない会社には一定の負けパターンがあります。本書は、その答えを「経営戦略の定石」という視点から明快に解き明かします。
私たちは、漠然と経営戦略を理解しているつもりでも、実際に明確な戦略を打ち出し、実行できている企業は稀です。多くの企業が戦略目的の曖昧さや市場動向への洞察不足に悩まされているのが現実です。だからこそ、本書は「成功するための戦略」と「失敗しないための戦略」を体系的に学べるよう、多彩な実際の事例(全84ケース)を交えながら、具体的で実践的な解説を提供します。
Udemyの人気講座、3万人以上が受講した
事業戦略がわかる!
『はじめての経営戦略論』、待望の書籍化!
全社戦略がわかる!
最新のデジタル・プラットフォーム戦略がわかる!
有名企業の成功と失敗から、経営戦略の全体像と定石を学ぶ
GAFAM、テスラ、ネットフリックス、ナイキ、
ユニクロ、楽天、ヤフー、トヨタ、パナソニック、日立製作所、ラクスル、ワークマン etc.
本書の3つのポイント
【ポイント1:事業戦略と全社戦略の体系的理解】
市場選択(ポジショニング)と経営資源(リソース・ベースド・ビュー)の2つの視点から、事業戦略を明確にします。さらに、複数の事業を統合して企業全体としての成長を促進する全社戦略についても解説。統一的な視点から、経営戦略の全体像(事業戦略と全社戦略)について理解することができます。キリンビールとアサヒビールの市場への対応、ユニクロのSPAモデル、QBハウスの市場戦略、富士フイルムの新規事業戦略など、身近で具体的な事例から学びを深めましょう。
【ポイント2:現代的な価値創造 ―デジタル・プラットフォームの台頭】
アマゾンやグーグルなどのプラットフォーム企業がもたらした価値創造の大きな変化を捉え、これまでのものづくり中心の日本企業が新たに取り組むべき戦略について掘り下げます。ラクスル、PayPay、ネットフリックス、メルカリなどの成功事例を通じて、21世紀型ビジネスモデルの実践的理解を促します。また、Web3.0やブロックチェーン技術、あるいはEUのプラットフォーム規制など、巨大プラットフォームへの抵抗がどのようになされてきたかにも触れています。
【ポイント3:市場選択へのフォーカスと外部環境への視点】
企業が継続的に成長するためには、適切な市場選択が欠かせません。しかし、その市場選択が非常に難しいのが実態です。その際、経営者としては外部環境の変化をいかに洞察し、先んじて手を打てるかが成功のカギとなるでしょう。本書では外部環境の変化を洞察するという観点を強調しており、よりダイナミックな戦略構築を推奨しています。そこでは単に市場の成長・成熟といったプロダクトライフサイクルの視点だけではなく、より深い市場への洞察が求められることになるでしょう。キヤノンの成長やシマノの市場選択、シナリオプランニングなどから臨場感高く学びます。
本書は、Udemyで累計3万人以上に受講され、高評価を得ている著者による人気講座『はじめての経営戦略論』をベースにしています。それに加え、全社戦略やプラットフォーム・ビジネスの内容、そして最新の事例を加えて再構成した決定版となっています。
難しい経営理論や用語は極力避け、実践的な視点から「経営戦略の定石」を伝えることに注力しました。経営層を目指すビジネスパーソンはもちろん、経営戦略を初めて学ぶ学生にも最適な入門書です。
あなたのビジネスに「成功するための定石」を身につけ、社会により大きな価値を提供する一歩を踏み出しましょう。
気になる本書の内容
本書の内容は以下の通りです。
第1章 経営戦略とは何か?
――環境変化・目標・構造的取り組み
1-1 事例から考える経営戦略
経営戦略に対する漠然としたイメージ
実際の経営判断に触れてみよう
〈事例1〉キリンビールとアサヒビール ― 縮小するビール市場への対応
〈事例2〉雪印乳業と明治乳業 ― 乳製品輸入自由化への対応
経営判断の違いと「筋の良い選択」
1-2 経営の重層構造と戦略の2大流派
経営の重層構造 ― 戦略的 vs. オペレーショナル
経営戦略論の2大流派 ― ポジショニング派とリソース・ベースド・ビュー派
〈事例3〉QBハウスの市場選択
〈事例4〉ユニクロ(ファーストリテイリング)の経営資源の変化
外部(市場)と内部(経営資源)のどちらが重要か?
1-3 あらゆる市場は成熟する ― 事業戦略と全社戦略を分ける
あらゆる市場は成熟する ― 成長性と収益性を分ける
市場の段階と競争ルールの違い ― プロダクト・ライフサイクル(PLC)
1-4 経営戦略とは何か?
経営戦略の定義
経営戦略における目標設定とは?
事業戦略と全社戦略の対応
COLUMN 経営戦略論の登場と環境を変えようとする意思
第2章 事業戦略① 市場選択
――勝てる市場を選択せよ!
2-1 市場に対する解像度を上げる
どの市場を選ぶのか?
誰に、何を売るか?
〈事例5〉日本ペイントや関西ペイントなど塗料業界の顧客とは?
「自社の市場は何か?」を正確に理解する
〈事例6〉JTBやHISにとってインバウンド市場は有望市場か?
〈事例7〉富士フイルムの「機能性化粧品市場」参入
〈事例8〉中価格帯の家具市場は存在するか? ― 大塚家具の訴求
〈事例9〉オーダースーツのRe.muse は何を売っているのか?
〈事例10〉「レンタル収納サービス」エリアリンク ― モノの二次流通市場に拡大するか?
2-2 成長市場を選択する
プロダクト・ライフサイクルの結論
〈事例11〉新電力市場は成長市場か? ― ENEOSでんき、ドコモでんき
〈事例12〉楽天モバイルは今後どうなる?
成長市場との向き合い方
〈事例13〉成長市場における競争 ― 山崎製パン vs. 第一屋製パン
〈事例14〉PayPayの投資戦略 ― 市場成長期の積極投資で圧倒的な認知・シェアを獲得
〈事例15〉吉野家の破産 ― 倍々ゲームの中での失敗
〈事例16〉コインランドリー市場の成熟化 ― WASHハウスの苦戦
〈事例17〉ランニングシューズ市場の拡大とアシックス
成熟化した市場との向き合い方
〈事例18〉ハイボールブームとウイスキー市場の復活
〈事例19〉ビッグデータ時代の到来と磁気テープ市場
2-3 独占を目指すポジショニング ― 競争しなくてよい場所を選べ
競争しなくてよい場所を選ぶ ―ポーターの3類型
5Forces分析
〈事例20〉デル ― 直接販売&受注生産の「デル・ダイレクト・モデル」
〈事例21〉ペプシとサントリーの提携 ― 買い手の交渉力を緩和する戦略
2-4 市場動向の読み
既出のフレームワークの視点 ―PLC、5Forces
PEST分析
〈事例22〉システムエンジニア業界(SIer)における変化を想像する
〈事例23〉緑茶市場のシナリオ分析 ― 対象:グローバル/期間:5年
市場の本質を深く捉える
〈事例24〉シマノの「自転車」という市場選択
〈事例25〉キヤノンのエレクトロニクス分野への進出
COLUMN 経営理論は前提まで正しく使う
第3章 事業戦略② 経営資源の獲得
――強みを構築せよ!
3-1 「経営資源」とは何か?
さまざまな用語の乱立 ― 経営資源、強み、ケイパビリティ、コア・コンピタンス
「どの市場で戦うか?」によって強みは変わる
〈事例26〉1人前3万5千円の寿司屋の強みは?
〈事例27〉ワークマンの快進撃
〈事例28〉窓口の相談スキルをどう活かすか? ― リアル店舗窓口とオンライン窓口
SWOT分析の注意点
3-2 競争優位を生み出す経営資源とは?
選んだ市場に対する専門性は必須
①規模 ―量的な大きさによる優位性
規模の経済(economies of scale)
〈事例29〉マクドナルドは100円バーガーを販売して利益を向上させる
〈事例30〉カルビーの躍進 ― 松本改革の成功
範囲の経済(economies of scope)
〈事例31〉すかいらーくグループのセントラルキッチン
〈事例32〉大塚商会のセンター化
密度の経済(economies of density)
〈事例33〉プレサンスコーポレーション
〈事例34〉キヤノン電子の酒巻改革
経験曲線効果(experience curve effect)
〈事例35〉三菱スペースジェ1 ット(旧MRJ)の失敗
〈事例36〉サイゼリヤの「究極のあと出しじゃんけん」
〈事例37〉アマゾンの小売事業
②人・組織 ―質的な違いによる優位性
マッキンゼーの7S(ソフトの4S /ハードの3S)
〈事例38〉ジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条」とタイレノール事件
〈事例39〉マイクロソフトの変革 ― 排他性からオープン性へ
〈事例40〉トランプ政権のH1Bビザ縮小とインドのスタートアップブーム
〈事例41〉Zara(インディテックス)と弁当の玉子屋の共通スキルとは?
〈事例42〉グーグルのニューロダイバーシティ
〈事例43〉アマゾンのピザ2枚ルール
〈事例44〉階層を極限まで減らした信越化学工業 ― すべての組織が常務委員会に直結
〈事例45〉テスラの自動運転システムとギガファクトリー ― ソフトウェア・ドリブンの発想
③ビジネスモデル ―収益構造そのものの違いによる優位性
〈事例46〉GAPのSPAモデルと異業種への広がり
〈事例47〉スマートフォンの登場とシェアリング・エコノミーの流行
〈事例48〉コンタクトレンズとHOYAの躍進
〈事例49〉バーベキューモデルを応用する ― セルフサービスからわんわん動物園まで
〈事例50〉価値のある部分に特化してスケールする ― QBハウスからBooking.com、そしてSHIFT
3-3 強みを更新する ― 強みは常に陳腐化する
強みはなくなり、環境が変われば重荷になる
強みをいかにアップデートし続けるか?
〈事例51〉ネットフリックスのDX
市場選択と重ね合わせる
COLUMN 強みは財務に表れる
第4章 デジタル・プラットフォームの台頭
――価値創造の方程式が変わった
4-1 価値創造の方程式が変わった
平成元年と令和元年における企業の時価総額の違い
プラットフォームとは何か?
〈事例52〉アマゾンのネットワーク効果 ― ベゾスが紙ナプキンに描いたループ図
20世紀的戦略論と何が違うか?
〈事例53〉印刷機をつないだラクスル ― 小口印刷の需給をマッチング
デジタル・プラットフォームの帰結
①市場においてデジタル・プラットフォームは一強化する
②企業はそれぞれのコア・コンピタンスに集中する必要がある
③メーカーの地位は低下する
〈事例54〉ZOZOスーツの失敗
4-2 プラットフォーム・ビジネスの構造
仲介型と基盤型
〈事例55〉仲介型プラットフォーム ― 軒先から駐車場までマッチング
〈事例56〉デルとフェデックス
市場選択と拡大の順番が重要
〈事例57〉ECサービスでもいろいろ ― 市場選択を工夫すれば総合ECにも対抗できる
〈事例58〉アマゾン拡大の順番
プラットフォーム固有の問題
①ネットワーク効果の設計
〈事例59〉PayPayの躍進 ―「お金を燃やしながら拡大する」という王道
②ガバナンスの設計
〈事例60〉食べログとRetty ― 匿名か? 実名か?
〈事例61〉相互評価システムの重要性と難しさ ― 5点満点の正義とは?
③マネタイズの設計
〈事例62〉フェイスブックとX(旧ツイッター)
〈事例63〉ネットフリックスの有料課金モデル
デジタル・プラットフォームを利用する
〈事例64〉イノセンティブの破壊力 ― 多様性の力を知る
〈事例65〉リブセンスの失敗 ― プラットフォーム側のロジック変更
〈事例66〉トイザらスの失敗とターゲットの工夫
4-3 プラットフォームへの抵抗
DTCの挑戦
〈事例67〉ナイキのDTC への挑戦と縮小
Web3.0は機能するか?
排除法の試み ― EUによるデジタル規制
プラットフォーム側も模索中
COLUMN 国によって異なるプラットフォームの押さえ方
第5章 全社戦略① 事業ポートフォリオの構築
――成長への飽くなき追求
5-1 成長のための市場選択と全社戦略の必要性
成長のための市場選択
〈事例68〉ボストン・サイエンティフィックのコア・コンピタンスとは?
〈事例69〉サムスン電子の狙うべき市場とは? ― リバース・エンジニアリング×資本力の脅威
事業の自然な拡大と事業ポートフォリオの整理
〈事例70〉レイセオンの電子レンジと味の素の半導体絶縁フィルム
5-2 事業ポートフォリオの構築
①全社ビジョンと目標ポートフォリオの策定
〈事例71〉日立製作所の大転換
〈事例72〉クラレの戦略的方向性
②戦略的事業単位(SBU)の設定
〈事例73〉NTTの組織再編
③複数の切り口からポートフォリオを考える
④各事業単位に戦略を当てはめる
〈事例74〉オリンパスと信越化学の事業撤退への考え方の違い
多角化か? 分社化か?
COLUMN BCGのPPM(製品ポートフォリオ・マネジメント)
第6章 全社戦略②シナジー・マネジメントと全社組織
――グループとしての強みとは何か?
6-1 親会社・本部がどこまで介入するべきか?
ペアレンティング戦略
縦のシナジーと横のシナジー
本部の介入度合いと事業価値の創造
6-2 組織への期待とカルチャーへの影響
基本的な組織の分け方
〈事例75〉トヨタの組織変更 ―ビジネスユニット制から社内カンパニー制へ
〈事例76〉パナソニック(松下電器産業)の組織再編
組織によるカルチャーの分離
〈事例77〉トヨタの工販分離
〈事例78〉JSR の本社分離 ―CEO・COO 体制(2019年~)
組織構造ではなく、組織文化に期待する考え方
〈事例79〉GEの組織文化 ─ジャック・ウェルチの挑戦
6-3 横のシナジー実現の困難さ
シナジー発現の事例
シナジーの幻想 ―M&Aの失敗事例
〈事例80〉ユナイテッド航空 ―航空会社とホテル事業・タクシー事業
〈事例81〉ユニオン・パシフィック鉄道 ―貨物鉄道とトラックのシナジーはあるか?
〈事例82〉米国ユナム ―団体保険と個人保険のシナジーはあるか?
〈事例83〉AOL とタイムワーナー ―新旧メディアの合併
〈事例84〉ダイムラー・クライスラー ―合併による規模の経済は実現するか?
横の事業シナジーを単純に考えない
COLUMN 「戦略が先か? 組織が先か?」 ― アンゾフの逆命題
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これまでマーケティングに関する本は何冊も手掛けてきましたが、ここまで原理原則を掘り下げて論じた本は初めて担当しました。「顧客ニーズを発見・創造し、それを具体化・伝達する企業活動すべて」というマーケティングの定義、それを実際の企業の事例96個に当てはめて解説するという内容は、多くの「マーケティングってよく聞くけど、いったい何なの?」という人の長年の疑問を氷解させてくれることは疑いないでしょう(そもそも私自身が非常に勉強になりました)。マーケティング思考は、マーケターに限らず、ビジネスに携わるすべての人が持つべき最も基本的かつ重要な思考です。本書をお読みいただき、日々のお仕事の中で実践していただくことで確実に血肉にできるはずです。すべてのビジネスパーソンにおすすめの1冊です。
POSTED BY貝瀬
View Moreマーケティングを正しく理解できていますか?
多くのビジネスパーソンが重要だとわかっていながらも、正確な意味をしっかり把握できていないし、実践できていないのが「マーケティング」です。
マーケティングのことを「市場調査」だと思う人もいるでしょうし、「販売戦略」を指して使う人もいるかもしれません。
あるいは「商品を売るための施策全般のこと」と言う人もいるかもしれません。
もし、マーケティングを「商品を販売すること」と言ったらら、それは完全な間違いです。
なぜなら、そもそも商品が売れているということは、顧客が喜んで買ってくれているからです。
つまり、マーケティングの本質は「商品を販売すること」ではなく、「顧客を満足させること」です。
多くの人が曖昧なまま実践している
「マーケティング」の全体像を明快に解説!
古今東西の有名企業の事例96個を紹介
エピソードを通じて誰でも楽々理解できる!
顧客のニーズとウォンツを理解する
では、「商品を販売すること」と「顧客を満足させること」は何がどう違うのでしょうか?
これは企業側の視点か顧客側の視点かで違ってきます。
どういうことでしょうか?
ビジネス書でよく紹介される「顧客はドリルが欲しいのではない。穴が欲しいのだ」というフレーズで説明しましょう。
ある人がホームセンターにドリルを買いに行ったとします。
それは「ドリルが欲しい」からでしょうか?
違いますよね。
この人の本当の目的は「穴を空ける」ことです。
穴を空けられる器具であれば、別にドリルでなくてもよいかもしれません。
「穴」のことをマーケティング用語で「ニーズ」といいます。
そして、「ドリル」のことを「ウォンツ」といいます。
ニーズは顧客の根本的な欲求のことで、ウォンツはそのニーズを満たすための手段の1つにすぎません。
つまり、「商品を販売すること」はウォンツ視点、「顧客を満足させること」はニーズ視点ということです。
顧客視点を洞察して成功をおさめた「クイックルワイパー」
たとえば、顧客視点の成功例の1つとして花王のクイックルワイパーが挙げられます。
1994年に日本で発売され、6年後の2000年には世帯普及率が45%と爆発的にヒットしました。
立った状態のままで床の雑巾がけができることが消費者のニーズに刺さりました。
電機メーカーが掃除機の吸引力向上や騒音抑制といったハードウェアのスペック向上に血道を上げている市場において、すき間を潜り抜けた花王が見事に顧客ニーズを捉えた事例です。
私たちは、電機メーカーのように自社商品に囚われて、顧客ニーズを満たすことを忘れがちです。
実際、本書の著者、丹羽亮介さんがさまざまな企業の新規事業提案や企業戦略立案を審査・評価すると、大半が「自社に都合の良い提案」が多いそうです。
たとえば、
「自社の今の強みを掛け合わせるとこんなことができます」
「自社にとってこの領域は新規事業になるので参入してみる価値があります」など。
要は、顧客にとってのメリットや顧客ニーズの理解ががすっぽり抜け落ちてしまっています。
これでは施策も成功確率も下がってしまい、せっかくヒト・モノ・カネといった資源を投入しても実を結ばないという残念な結果になってしまうでしょう。
そうならないためには、顧客のニーズ、ウォンツをきちんと分けて考えることが大切です。
マーケティングとは何か?
さて、ここで改めてマーケティングの定義を確認しておきましょう。
端的に言えば、マーケティングとは「顧客の視点に立って継続的に行なう企業活動のすべて」です。
具体的にどういうことでしょうか?
ポイントは、次の2つです。
1つ目は、顧客にきちんと評価されるニーズを見つけることです。
そもそもニーズのないところにどんなに良い商品・サービスを投入しても売れませんし、結果として企業も存続できません。
2つ目は、価値あるニーズを発見した上で、それを具体的な商品・サービスとしてしっかり作り込んで顧客に届けることです。
単に商品を作るだけでなく、その商品を顧客に認知してもらい、買ってもらえるというフェーズまで持っていく必要があります。
そのために必要なのがプロモーション(広告宣伝)戦略やチャネル戦略です。
この2つを合わせて「顧客ニーズを発見・創造し、それを具体化・伝達する企業活動すべて」となります。
本書のコンセプト
本書のコンセプトは、こうしたマーケティングの全体像を体系的に理解していただき、「自社が何ができていて何ができていないのか」を知っていただくいただくことです。
本書では、古典的な事例から最新の事例まで、96個の企業事例を参考にしながらマーケティングの全体像を押さえていただくようにしています。
その基礎の上で個別のテクニックを学んでいけば、一層その役割(と限界)が理解でき、理論やテクニックを有効に活用できるようになるでしょう。
これまでの「当たるも八卦当たらぬも八卦」という行き当たりばったりの「マーケティング施策」から卒業し、より仮説検証と改善がしやすくなる施策へと進化させられるに違いありません。
ちなみに、本書は動画配信プラットフォームUdemyの「はじめてのマーケティング」という動画講義がもとになっています。
現在、3万6000人を超えるビジネスパーソンがこの講義を受講しています(2024年6月現在)。
本書は、「マーケティング思考を身につけて成果を上げたい」と考えている、すべてのビジネスパーソンの皆さまにおすすめの1冊です。
気になる本書の内容
本書の内容は以下の通りです。
第1章 マーケティングとは何か?
――顧客視点での価値創造
1-1 マーケティングと顧客視点
ニーズとウォンツから考える「マーケティング的発想」
〈事例1〉クイックルワイパー
顧客視点がないサービスは失敗する
〈事例2〉全日本空輸(ANA)の海外ホテル事業
〈事例3〉D2Cのメリット
1-2 顧客ニーズの進化と多様性
ニーズは常に進化する ――次のニーズを予見せよ
ニーズの多様性を理解する ――顧客への共感性と未来への洞察
〈事例4〉T型フォードの盛衰
〈事例5〉アルコール飲料・旅行先・洋菓子ニーズの多様化
〈事例6〉日本の半導体産業の衰退
〈事例7〉検索ニーズの変化とGoogleの苦境
〈事例8〉アトピー性皮膚炎患者のニーズ
〈事例9〉大人用オムツ
1-3 マーケティングとは何か
マーケティングの定義と全体像
①顧客ニーズの発見・創造
②顧客ニーズの具体化・伝達
売上方程式とマーケティングの関係
1-4 マーケティング理論の歴史的発展
マーケティングの歴史と顧客ニーズの変化
コラム 史上初、グローバルな世代の誕生?
第2章 顧客ニーズを発見する
――セグメンテーション&ターゲティング
2-1 セグメンテーションの重要性
絞らなければ顧客ニーズは決まらない
〈事例10〉イオン・イトーヨーカドー・和民の苦境
〈事例11〉ザ・リミテッド
2-2 セグメンテーションの実践
①消費者セグメンテーション
i)地理的変数― 所変われば品変わる
ii)人口動態的変数―さまざまな顧客属性に伴うニーズ
iii)心理的変数―内面への飛躍
iv)行動変数―データ分析との掛け合わせ
〈事例12〉江崎グリコのGABAとLIBERA
〈事例13〉メガネスーパーの業績回復
〈事例14〉食品業界、自動車業界 ~地理的変数によるニーズの違い
〈事例15〉自販機、複写機、コーヒーチェーン ~コロナ禍の人流変化に影響を受けた業界
〈事例16〉化粧品業界 ~人口動態的変数によるニーズの違い
〈事例17〉コンビニエンスストアのお一人様商品 ~世帯構成の変化の影響
〈事例18〉ナイキのJust Do Itキャンペーン~心理的変数の事例
〈事例19〉スターバックスの「第三の場所」~心理的変数の事例
〈事例20〉ホンダのスーパーカブ~行動変数によるニーズの違い
〈事例21〉パナソニックのレッツノート
〈事例22〉テイクアウト焼き肉
②提案型セグメンテーション i)普遍的に評価される3つの価値
ii)TPOで区別した価値訴求
iii)プロセスの細分化と統合
〈事例23〉コーヒー市場のセグメンテーション ~コーヒーギフト、アイスコーヒー
〈事例24〉アップル、ボルボ ~製品リーダーの事例
〈事例25〉牛角 ~オペレーショナル・エクセレンスの事例
〈事例26〉俺の株式会社 ~オペレーショナル・エクセレンスの事例
〈事例27〉Dell、ハーレーダビッドソン、行きつけの居酒屋 ~カスタマーインティマシーの事例
〈事例28〉バレンタイン用ワイン、ナイトブラ、アサヒのワンダ ~Time(時)による区別例
〈事例29〉スーツ市場 ~Place(場所)、Ocasion(場面)による区別例
〈事例30〉アフタートリートメント、ブースター化粧品、ほけんの窓口 ~プロセス細分化の事例
〈事例31〉ファブリーズ、全身シャンプー ~プロセス統合の事例
③顧客セグメンテーション
〈事例32〉ローソンの顧客セグメンテーション
〈事例33〉ヤマヒロの顧客セグメンテーション
2-3 ターゲティング ――なぜ1番でなくてはいけないのか?
ターゲティングに必要な2つの条件 ――「規模感」と「勝てること」
〈事例34〉USJのターゲティングの失敗
〈事例35〉日本経済新聞、ボルボ、News Picks、ヘルシア ~1位になれるターゲティング
〈事例36〉日本一高い山、世界一高い山
コラム 顕在ニーズか? 潜在ニーズか?
〈事例37〉メルカリとバイセルテクノロジーズ ~顕在ニーズと潜在ニーズ
第3章 より深い顧客ニーズを洞察する
――行動観察とペルソナ設定
3-1 成熟社会におけるインサイトの重要性
より深い洞察(インサイト)を得るために
〈事例38〉ネスレ日本のネスカフェアンバサダープログラム
〈事例39〉味の素「CookDo(クックドゥ)」
〈事例40〉大戸屋の店舗展開
3-2 インサイトをいかに獲得するか
行動観察によって顧客の心の動きを探る
〈事例41〉P&G「レノア」における行動観察
ペルソナ設定で顧客像への臨場感を高める
〈事例42〉シンガポール向けスマートフォンの開発例
コラム ブランドの人格化とペルソナ設定とは違う
〈事例43〉スープストックトーキョーの秋野つゆ
第4章 「アレといえばコレ」
――ポジショニングで差別化を不要にする
4-1 差別化できない時代の「ポジショニング」
ポジショニングとは何か?
〈事例44〉エバラ焼き肉のタレ、コーヒーギフトはAGF、マヨネーズはキユーピー ~ポジショニングの代表例
〈事例45〉TSUBAKI(旧・資生堂)のポジショニング
ポジショニング・マップ
〈事例46〉ハンバーガーチェーンのポジショニング
〈事例47〉アサヒWONDA ~朝のコーヒー
4-2 ポジショニングを実現するには
ポジショニングの手法を工夫する
〈事例48〉ルルレモンのポジショニング手法
〈事例49〉GoProのポジショニング手法
ポジショニング・ステートメント
〈事例50〉ファイア ワンデイ ブラック(キリンビバレッジ)のポジショニング・ステートメント例
〈事例51〉マインドシーズ「寺子屋」のポジショニング・ステートメント例
第5章 顧客ニーズの具体化・伝達
――マーケティング・ミックス
5-1 マーケティング・ミックスとは何か?
顧客に価値をどう伝えるか?
〈事例52〉幸楽苑と日高屋 ~4Pの違い
〈事例53〉美津濃の勝ちパターンとその変化 ~スポーツ用品メーカーの4P
〈事例54〉ナイキの頂上戦略
〈事例55〉ルルレモン② 4P
売上方程式とマーケティング・ミックス
コラム ルルレモンの4P
5-2 4Pの戦略①商品戦略(Product)
多様なニーズを想定する
〈事例56〉ハーレー・ダビッドソンの情緒的価値
顧客が価値を感じるのはいつか?
〈事例57〉スカンジナビア航空の真実の瞬間
〈事例58〉P&Gの真実の瞬間
〈事例59〉GoogleのZMOT
顧客との価値共創
〈事例60〉GEの航空機エンジン① ~モノ売りからの脱却
〈事例61〉テスラの価値共創
〈事例62〉ユーチューブ、クックパッド ~顧客が直接参加するモデル
コラム ピーク・エンドの法則
〈事例63〉旅館の見送りサービス
5-3 4Pの戦略② 価格戦略(Price)
価格の経営に対する影響
価格設定と顧客選好度
〈事例64〉どのワインを選ぶか? ~松竹梅効果
〈事例65〉ストリーミングサービス、携帯電話の料金プラン ~市場浸透価格
〈事例66〉アップルのiPhone ~上澄み吸収価格
〈事例67〉スイスの高級腕時計 ~バリュープライシング
〈事例68〉キーエンス ~バリュープライシングでの超高収益
価格ミックスを意識する
〈事例69〉スシローの価格戦略
〈事例70〉亀田製菓「柿の種」の国民投票
誰がいつ払うのか?
〈事例71〉子ども関連商品(教育費、おもちゃ、ゲームなど)の支払いモデル
〈事例72〉社会保険の公費負担の支払いモデル
〈事例73〉トリンプ・インターナショナルのおねだりモデル
〈事例74〉グーグル、フェイスブック、無料Wi-Fiの広告モデル
〈事例75〉GEの航空機エンジン② ~ジレット・モデル
〈事例76〉テレビやタブレットのサブスクモデルの可能性 ~IoTの活用
5-4 4Pの戦略③ チャネル戦略(Place)
リーチとコントロール可能性のトレードオフ
〈事例77〉コカ・コーラの原液ビジネス
チャネルは一度構築すると変えることが難しい
〈事例78〉パナソニック、日立の代理店モデル ~町の電気屋さん
〈事例79〉ヤマダデンキとEC ~フランチャイズモデルの制約
〈事例80〉ダイドードリンコの自販機ビジネス
チャネルの質を高める
〈事例81〉P&G「パンテーン」の「店頭SKU最適化プロジェクト」
〈事例82〉トライアルHD×サントリー酒類 ~棚管理のDX
〈事例83〉オービックビジネスコンサルタントのコールセンター
〈事例84〉アイリスオーヤマのセールス・エイド・スタッフ
5-5 4Pの戦略④ プロモーション戦略(Promotion)
顧客とのコミュニケーションの変化
カスタマージャーニー ――顧客体験の流れを考える
〈事例85〉コメ兵のカスタマージャーニー
〈事例86〉バニッシュ・スタンダードの「スタッフ・スタート」
プロモーション戦略の方向性 ――インサイド・アウトか、アウトサイド・インか
コラム マインドフローのどこに注力すべきか?
〈事例87〉自動車ディーラーにおけるキャンペーン用DM
第6章 ブランド戦略
――世界観を伝える重要性
6-1 ブランドとは何か
ブランドとその育成
〈事例88〉オリエンタルランドのブランド育成
ブランドは資産になる ――ブランド・エクイティ
〈事例89〉サントリーのライン拡張 ~BOSSとサントリーの天然水
〈事例90〉トヨタとENEOSのカテゴリー拡張
ブランド・ターゲットとセールス・ターゲット
〈事例91〉無印良品におけるブランドターゲット
6-2 経営戦略の中のブランド
ブランドの建付けが重要
〈事例92〉バッグワークスのBtoC事業
〈事例93〉ユニクロとGUの建付け
ブランドの対象範囲
6-3 ブランドとソーシャル・グッド
ブランドに社会的価値が求められる時代
〈事例94〉P&GのAlways「Like A Girl」キャンペーン
〈事例95〉トニーズチョコロンリーと現代奴隷制の撲滅
コラム ソーシャル・グッドの実現は視点を上げて
〈事例96〉アディダスの女性用水着とバーガーキングのProud Whopper
おわりに
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