この対談の魅力は、内田さんの身体感覚に根ざした思考と、近内さんの言葉をほどいていく力が、互いを引き出し合いながら進んでいくところにあります。社会の分断、教育の閉塞感、自己肯定感の揺らぎといった重いテーマも、「愉快に生きる」という視点が通ることで、読み味は、驚くほど軽やかです。読み終えると、目の前の問題が消えるわけではないのに、少し呼吸がしやすくなり、次の一歩を選べる感覚が残る――そんな本になっています。考えすぎて動けないとき、正しさに疲れたときに、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
POSTED BY吉田
【日本を代表する思想家と、
気鋭の哲学研究者による初の対談本!】
本書『自由より自在に生きる』では、思想家・内田樹さんと哲学研究者・近内悠太さんが、
いまの社会に広がる「息苦しさ」や「生きづらさ」の正体を、
身体、教育、共同体、政治、贈与といったキーワードから読み解いていく一冊です。
対談の軸にあるのは、「自由」よりも「自在」という発想。
自分の正しさや勝ち負けに居着かず、その場の理に応じて動ける状態をどう取り戻すか。
武道の身体感覚と哲学の思考を往復しながら、
現代人が失いがちな感度や判断力を、やわらかく、しかし鋭く掘り下げます。
また本書では、
・“うんざりしたとき”こそ変化の入口になること
・苦難に耐えること自体を目的にしない修行観
・分断や排外主義が強まる時代の空気の読み解き方
・教育と共同体を支える「同期」「共身体」の感覚
・私たちの社会に必要な「贈与」の視点
など、日々の実感につながる論点が豊かに語られます。
抽象的な思想の話にとどまらず、
仕事、人間関係、学び、年齢を重ねること、社会の変化への向き合い方まで、
読者それぞれの生活に引き寄せて考えられるのが、本書の大きな魅力です。
「答え」よりも、複雑な現実の中で動ける“姿勢”が手に入ります。
目次
INTRODUCTIONPART1 愉快に生きるとは?
愉快に生きていく作法
次の行動の選択肢が限られているとき、生きづらさや息苦しさを感じる
「居着き」を取り払い、「自在」を得る
修行は「苦難に耐える」のが目的ではない
三歩進んで二歩半下がる世界
リスクを恐れない者が新しい道を見つける
うんざりしたときが実はチャンス
「成長」したいのであれば、勝負にこだわってはいけない
全体の設計者がいると思い込む陰謀論
作り上げるよりも「壊す」方が魅力的に見える社会
「勝つ」という成功体験の危険性
ナラティブが現実世界を動かしている
共同体を支えるメンバーを育てていく
セーフティネットとしての「コモン」
生きることに意味を感じられない若者たち
武道の世界には「ゴール」が存在しない
修行は「厳しい」よりも「楽しい」もの
「なすべきことをなす」人が場を主宰する
「同期」と「共身体」
物事を俯瞰的に見ることの大切さ
「同期を誘発する者」と「同期を誘発される者」
子どもたちの「遊び」によって養われるもの
人間は模倣して成長する動物
「伝える力」よりも大事な「汲み取る力」
PART2 自由よりも「自在」に動く
対立し、補完し合う「自由」と「平等」
場の理に従って動く「自在」
「自由」に潜んでいる難しさ
人間の欲望の対象は〝あと少しで手が届きそうなもの〞
安心感を与える〝共和的なコミュニティ〞
〝一度失敗したら終わり〞の現代日本
野蛮と無知と幼児性が、力を持っている現代
「清浄」と「汚物」の二項対立
〝残された時間〞をどう生きるかという思考訓練
クリエイティブな世界で語られる巨大なカタストロフィ
不全感を共有することで時代を変える
類的な存在で、類的な発想をする
世界は〝新しいカタルシス〞を求めている
ホモ・サピエンスはそんなに〝やわ〞ではない
無知であることは〝楽しくない〞
解釈を考えることができる芸術の楽しさ
五感が呼び覚まされる能
過去と未来の人とつながっている水脈
知性と想像力が湧き上がる経験が必要
PART3 愉快な身体の共振
葛藤を抱え込むと、頭の容量は大きくなる
頭を大きくする機会が足りない現代教育
必要以上に「自分らしさ」を求められる現代
危険なものを察知する身体感度を高める
「身体は同期する」は心地いいもの
合気道から考える「同期」
身体的な感度を高めて感じられる「同期」
武道の目的は「我執を去って自在を得る」
西洋人には理解しにくい「我執を去る」
境界線がなくなっていく感覚
東アジア的な宗教的成熟とキリスト教の対比
見えていなかったものを顕在化する「霊的な場所」
霊的な場所では、身体の感度がよくなる
教育は教師一人が担うものではない
教育で満点をめざすのは「気持ち悪いこと」
学校教育に修行的要素を戻すことの大切さ
人は未知なるものに惹かれていく
PART4 私たちの社会に必要な「贈与」
「贈与」という言葉を考えてみる
贈り物には反対給付義務が生じる
自己肯定感も高めてくれる「贈与」
自分の存在自体が丸ごと贈り物
招待されたということも、有責性の一部になる
狩猟民族の大事な決まりごと
「驚く力」の重要性
贈り物をもたらしてくれる存在
想像力は、人間の知性の良質なもの
哲学は人の頭をよくするための装置
贈与は「パブリックドメイン」
「贈与」のレッスンを積むことで、「世界」が開かれる
CONCLUSION
著者について
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1950年東京都生まれ。思想家、武道家、神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門は20世紀フランス哲学・文学、武道論、教育論。主著に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『寝ながら学べる構造主義』、『先生はえらい』など。第6回小林秀雄賞(『私家版・ユダヤ文化論』)、2010年度新書大賞(『日本辺境論)、第三回伊丹十三賞を受賞。近著に『沈む日本とカオス化する世界』(SBクリエイティブ)など。
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1985年神奈川県生まれ。教育者。哲学研究者。慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。教養と哲学を教育の現場から立ち上げ、学問分野を越境する「知のマッシュアップ」を実践している。『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)で第29回山本七平賞・奨励賞を受賞。近著に『利他・ケア・傷の倫理学』(晶文社)。
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